長体,つまり文字が正方形ではなく縦長の長方形に収まるように作られている日本語用のフォントを(主にツルコズと合わせるために)まとめてみます。
長体かなフォント
ツルコズ
まずは,私の圧倒的お気に入りフォント「ツルコズ」から。
ツルコズは,カタカナだけで日本語を書いても読みやすくなるように,昭和初期に作られた「ツル5号」というフォントをもとに,ひらがなも加えた新しいフォントです。慣れると普通のかなフォントと違った読みやすさ*1があります。
しかし,ツルコズには,ひらがな,カタカナ,英数字や一部の記号しかないので,ツルコズだけでは,通常の漢字かな混じり文が書けません。
漢字かな混じり文を書くには,漢字の字形(グリフ)が含まれているフォントと組み合せることが必要になります。
これには,InDesignやIllusutratorといった,デザイナー用の専門ソフトウェアに含まれる「合成フォント」機能を使用するのが一般的です。ツルコズのサイトには,そのようにして組まれた例がのっています。
そして,あまり知られていませんが,ChromeというWebブラウザや,Emacsというテキストエディタでも文字ごとに使用するフォントを指定することで,フォントを組み合せることができます。
長体漢字フォント
ロゴたいぷゴシック-コンデンスド
ロゴたいぷゴシック-コンデンスドは無料で使える長体の漢字フォントで,「ロゴデザインやタイトルロゴ、見出し向け」として公開されていますが,ツルコズとの相性が良く,私はいつもツルコズと組み合わせて使っています。
注意点1:表示されない漢字がある
ロゴたいぷゴシック-コンデンスドはJIS第2水準漢字の一部までしか実装していないため,Webを見ていると,表示されない漢字がでてきます。これは,より多くの漢字を収録しているフォントと組み合わせることで,解決できます*3。
注意点2:仮想ボディが正方形
ロゴたいぷゴシック-コンデンスドの文字は正方形ですが,文字組みの際に使用される基準である仮想ボディは正方形に設定されているため,文字間に空白ができます。漢字が何文字も連続する場合,詰めて表示されるツルコズとの対比で,漢字の間の空白が目立つこともあります。
AXIS Condensed/Compressed
AXIS Condensedは有償の長体フォントです。
Fonts.com経由でWebフォントも提供されており,ブラウザ上で,好みの文章をテストすることもできます。
ツルコズとの組合せても違和感はなく,普段使いできそうです。
AXISには文字をさらに細くしたAXIS Compressedもあります。
UD新ゴ コンデンス
UD新ゴ コンデンスは,AXISより新しい有償長体フォントです。UD新ゴ ファミリーの一員で,フォントの幅が正方形の横幅を100として,90, 80, 70, 60, 50と細かく用意されているのが特徴です。
タイプバンクゴシックforコンデンス
タイプバンクゴシックforコンデンスはツルコズを出しているタイプバンクさんが出している長体用フォントです。このフォントはこれまで紹介した他の長体フォントとは使い方が異なり,DTPソフト上で長体にする変形をかけたときに,いい具合になるように設計されている正方形のフォントです。
ツルコズのサイトでは,C6に60%の長体をかけてツルコズと組合せた例がのっています。
またC6に80%の長体をかけるのも,ツルコズと相性がいいようです。
残念ながら,DTPソフトを持っていない私にとっては,使える場面が無いフォントです。もしタイプバンクから,適切な長体をかけた字間も調整したタイプバンクゴシックforコンデンスとツルコズを組合せたフォントが出れば,Word等,幅広いソフトで使えるようになるので,一番嬉しいのですが。
TTEdit半角明朝・ゴシック/2/3角明朝・ゴシック
武蔵システムが無償で配布している長体フォントのシリーズです。明朝とゴシックそれぞれについて,横幅が半角のものと,2/3角のものが用意されています。
「Excelなど文字幅を変更できないアプリで、文字数を多く記入したい時など」向けのフォントとのことですが,ロゴたいぷゴシック-コンデンスドとは違い,仮想ボディも長体であり,収録文字数も多いので,文字を詰めたいときにスポット的に使うには,非常に有効でしょう。また,長体の明朝体フォントは,シリーズ以外にはなさそうです。
2/3角ゴシックはツルコズとの相性も悪くないです。ただ,やや詰めすぎになる感があるので,1ピクセルの字間を入れた方がいいかもしれません。
しかし,2/3角ゴシック・明朝をそのまま使った方が読みやすい,という人もいるかもしれません。
半角ゴシック・明朝はツルコズと比べても細く,組み合せるのには向いていません。
*1:カナモジカイの記事(PDF)ではアラタと合わせて「カタカナの『語形をつくるチカラ』を最大限に発揮させる」としています。
*2:簡単に言うと,①Chromeについては,Stylishというアドオンをインストールして,@font-faceとunicode-rangeを使用したユーザーcssファイルをWebページに適用すれば使えます。②Emacsの場合は,init.elでcreate-fontset-from-ascii-font set-fontset-font decode-char等を利用してフォント指定をすればできます。なお,リンク先のファイルはどちらも未完成で,ドキュメントもなく,私が手元で使用しているファイルとも異なるので,そのまま使わない方がいいです。
*3:私は,源ノ角ゴシックRegularを組み合わせています。漢字の字形が正方形(正体)のフォントですが,ロゴたいぷゴシック-コンデンスドに搭載されていない漢字は画数が多いものが大半なため,ロゴたいぷゴシック-コンデンスドに混ぜても違和感がありません