文字は読むため、文は伝えるため。

コンピュータには、もっと楽に入力できるはず。コンピュータからの出力は、もっと快適に受けとれるはず。

よだか配列、こまどり配列をNicola、JISかな、ローマ字入力、新下駄配列と比較する

はじめに

日本語入力に使われる配列のうち、一番使われているローマ字配列、その改良版として有名なAZIK、自作のこまどり配列、かな配列として有名なJISかな配列とNicola(親指シフト)配列、配置の練られた文字キー同時打鍵系配列として評価が高い新下駄配列、同じく文字キー同時打鍵系の自作のよだか配列について動作数、打鍵数、指の移動量について比較してみました。

打鍵数と動作数について

かな配列はいずれもカナを入力するためになんらかの「シフト」キーを押します。

  • JISかな配列では小書きカナ(ゃゅょ等)や「を」「っ」、カギ括弧や句読点などを入力するのに普通のシフトキーを使います。
  • Nicola配列では、一部のカナや濁音、半濁音の入力に親指で打ち分ける2つのシフトキーと文字キーを同時に打ちます。
  • 新下駄配列では一部のカナを入力するときや、拗音ようおん拡張を使用する際に文字キー中に存在するシフトキー(計6個))と逆の手の文字キーを同時に打ちます。
  • よだか配列では一部のカナを入力する際や撥音はつおん拡張を使用する際に右手と左手でそれぞれ文字キーを一つづつ(計2つ)同時に打つほか、拗音を打つ場合などで、同じ手で2つのキーを同時に打つ場合もあります。

配列評価にあって打鍵数を数えるにあたっては、シフトのために押すキーと文字キーとあわせて2つ以上のキーが押されたと数えるか、シフトキーを1つのキーとは数えないかで流儀が分かれていますが、これは両方数えることとしましょう。

まず、シフトキーを無視し、複数キーの同時打鍵をキー1つの打鍵と同視する数え方については「動作数」として数えます。

シフトキーを含めたキーの数については「総打数」として数えることにします。指の負担量を測るためには動作数より総打数の方が有用でしょう。

各配列でのカナ数と動作数と打鍵数の関係

ローマ字入力や行段系配列

ローマ字入力や行段系配列の場合、シフト動作はありませんので総打数と動作数は等しくなります。ただし、かなを1文字入力するのにだいたいの場合は複数の打鍵が必要です。

かな配列

JISかな配列の場合、濁音や半濁音を入力するにはキーを2回打つ必要があるので、動作数は入力できるカナ数より多くなります。しかし、シフト動作が必要な割合は小さいので、動作数と打鍵数の差は小さくなります。

Nicola配列の場合、必ず一動作でカナを一つ入力するので、入力するカナの数と、「動作数」は等しくなります。Nicolaではシフトなしで入力できるカナ及び句読点の割合は出現頻度を考慮すると57%程度なので(これを「単打率」ということにします*1)、文章にもよりますが、打鍵数は動作数のおよそ1.4倍強くらいになるはずです。

新下駄配列やよだか配列でも一動作で一つのカナを出力できますが、新下駄配列では拗音を一動作で一気に入力できる拗音拡張があります。よだか配列では拗音拡張に加えて、撥音も一気に入力できる撥音拡張が使えます。これらの拡張が使えるときは「動作数」はカナの数を下回ります。

そして、新下駄配列もよだか配列も単打率は68%程度なので、拡張を考慮しなかった場合、打鍵数は動作数の1.3倍強くらいになるはずです。

動作数と打鍵数の例文での比較

例文:「さっぽろでちーむにごうりゅうした。」(札幌でチームに合流した。*2 17文字)

動作数 総打数
ローマ字入力 28 28
AZIK 23 23
こまどり 24 24
JISかな 20 23
Nicola 17 27
新下駄 16 22
よだか 16 24

動作数で言うと、

ローマ字入力>こまどり,AZIK>JISかな>Nicola,新下駄,よだか

の傾向が見て取れます。

しかし、総打数でみると

ローマ字入力Nicola>こまどり,よだか,AZIK,JISカナ,新下駄

という関係が読み取れ、この例文ではNicolaが意外に総打数が多くなっていることがわかります。これはこの例文ではNicolaでは単打にならないカナが多く使用されているからです。

他の例文でも見てみましょう。

例文:なんでもかんでもみんなおどりをおどっているよ。(23文字)

動作数 総打数
ローマ字入力 38 38
AZIK 35 35
こまどり 35 35
JISかな 30 30
Nicola 23 39
新下駄 23 33
よだか 20 28

動作数を見ると、

ローマ字>AZIK,こまどり>JISカナ>Nicola,新下駄>よだか

の関係が見て取れます。よだか配列の動作数が低くなっているのは、撥音拡張を3回も使えているからです。

総打数で見ると、

Nicolaローマ字入力>こまどり,AZIK>新下駄>JISかな>よだか

の関係が読み取れます。撥音拡張は使えるときは動作数、総打数両方の削減によく効くことがわかります。また、この例文も総打数的にはNicolaとは相性が悪いことがわかります。

指の移動量の比較

次は、動作数、総打数に加えて、キーボードによる文章入力の容易さ比較のための方法論試案で使用された計算方法および218文字の例文*3での指の移動量も比較してみましょう。

動作数 総打数 移動量(mm)
ローマ字(Qwerty 370 370 10566
ローマ字(Dvorak 370 370 6072
AZIK 340 340 9074
こまどり 357 357 3482
JISカナ 245 264 10508
Nicola 218 312 5004
新下駄 215 274 5136
よだか 204 276 5178

なお、この移動量は①キーボード中段をホームポジションにし、②指を毎回ホームポジションに戻すこと、が前提となっています。このため、JISカナ配列で、中段以外をホームポジションにした場合は数字が異なってきますし、促音を出すために子音を連打するローマ字入力には不利な計測結果になっています。

そういった不完全さに目をつぶると、指の移動量については、

ローマ字(Qwerty),JISかな>AZIK>ローマ字(Dvorak)>よだか,新下駄,Nicola>こまどり

という関係が成立しているのが分かります。

特にこまどり配列の移動量の少なさは圧倒的で、これは打鍵の68%がホームポジションの8キー、78%が中段の10キーに集中していることによります。*4 *5

また、ローマ字入力についてはQwertyをベースにAZIKを採用するよりも、Dvorakに変更した方が移動量の削減効果が大きいこともわかります*6

なお、今回の例文では総打数については、

ローマ字>こまどり>AZIKNicola>よだか,新下駄>JISかな

という関係が見てとれ、よだか配列と新下駄配列が総打数ではNicolaに勝っていて、JISかなに迫っていることが分かります。

また、動作数では

ローマ字>こまどり>AZIK>JISかな>Nicola,新下駄>よだか

という関係がみてとれます。

ほかの例文の結果の場合と合わせて見ると、かな配列4種については総打鍵が「Nicola>よだか>新下駄>JISかな」となり、動作数については「JISなか>Nicola>新下駄>よだか」となるようですね。

*1:この記事ではkouyさんの1gram分析データを使用して計算しています。

*2:Weblog 61℃: 同時打鍵は魔法の呪文ではない。より。他配列の動作数(リンク先では「名目打鍵数」)、総打数(リンク先では「実質打鍵数」)も書かれています。

*3:せっかくうったぶんしょうがいっしゅんできえてしまうのは、わたしもなんかいかけいけんがあります。しかし、こうしたいんたーふぇーすのけっかんがどこにせきにんがあるのかはいちがいにはいえません。このばあいでも、おやゆびしふとにせめをおわせることはできません。まず、とりけしきーのいちは、たしかにわーぷろせんようきのじだいのおやゆびしふとではえんたーきーのひだりでしたが、げんざいぱそこんでつかうばあいには、かならずしもそのいちにはありません。

*4:こまどり配列は中段だけでも現代日本語が打てるように設計されていますので、拡張機能を使わずに動作数(=総打数)が増加することを受け入れれば、指の移動量をさらに減少させることもできます

*5:中段志向で指の移動量を極端に少なくてできる一行系配列としては他にこまどり配列の元となった「つばめ配列」などがあります。

*6:AZIKの開発者がDvorakベースのACTに移行したというのも、うなずける話です。