ましゅーましまし

LARPとフォントとTRPGと日本語配列とマダミスとキーボードと(電子ペーパー)ディスプレイと自由の話

「パトリア・ソーリス」でのキャラクター作成手順指南

はじめに

この記事は

adventar.org

の記事だ。18日の枠をとったが、公開は24日になった。

自分は秋葉原卓ゲー部を中心に活動しているクトゥルーライブサークル:マスカレイドでコアメンバーをしていて、LARP界隈や秋葉原卓ゲー部の界隈では「ましゅー」を名乗っている。ファンタジーLARPを主に遊ぶレイムーンという団体にも所属して年に何回かゲームに参加させてもらっている。今年の秋にはレイムーンでオリジナルシナリオでのGMを一回やって、ベテランNPC陣のサポートでなんとか成功できた。

さて、日本で日本語で行われているファンタジーLARPのルールの原点「パトリア・ソーリス」のキャラクター作成は難しいとよく言われる。確かに難しいのだが、その難しさのかなりの部分がルール文章の配置の不親切さによるものだ。そこで、どの順番で読んで、どのように考えれば経験点(キャラクター作成時は作成点だが、この記事では「経験点」でまとめる)を効率的に使ったキャラクターを作成できるかを解説しよう。

まず、自分でキャラクターを作るには、ルールブックを読む必要がある。下記のリンクの「LARPルールブック」から、パトリア・ソーリスのルールブックをダウンロードして読める状態にしよう。

laymun.minim.ne.jp

スキルの習得はキャラクター作成の9割

パトリア・ソーリスのキャラクターのゲーム中に使うゲーム的なデータとしては

  1. 習得しているスキルとそのレベル(ランク)
  2. 習得しているスペル
  3. (一部の異種族の場合)種族の特殊能力
  4. 長所・短所

だけしかない。

装甲点はキャラクター自体のデータではなくどのような鎧をゲーム時に実際に着ているによるし、武器のリーチも実際に持ち込んだり借りたりしたLARP武器の長さによる。

そして、スペルの習得方法は、スキルの習得方法とほぼ同じだ。また、「長所」の大半は一部のスキルを習得しやすくするだけのものなので、短所と一部の異種族の特殊能力を除けば、「キャラクターの作成は9割はスキルの習得だ」といっていい。

種族の選択については、キャラクター性に影響があるし特殊能力があったりするので重要だが、「クラス」はどのスキル(スペル)が習得できるかと、どれくらい習得しやすいかにだけ影響し、特殊能力はないので、どのスキル(スペル)を習得したいかによってクラスを選んで問題ない。

キャラクター作成については、この「スキルの習得はキャラクター作成の9割」という認識を持つことがまず重要だ。

キャラクター作成の進め方

キャラクター作成は、ルールブックの記載によると

  1. 種族を選ぶ(p6-8)
  2. クラスを選ぶ(p8-14)
  3. 長所・短所を選ぶ(p15-17)
  4. スキル(p19-p39)やスペル(p53-p66)を選ぶ

という順番で読んで選んでいくことになっている。

でも、この順番でルールブックを読んでキャラクターを作るのは大変だ。キャラ作成で一番重要なのは4の「スキル(スペル)を選ぶ」段階なのに、その段階になかなか着かない。それなのに、1~3で何を選ぶかが、4に大きな影響を与えるので、1~3の段階をすっとばして4までいけないという罠まである。

私がお勧めするのは以下の順番だ。

  1. とりたいスキル(スペル)をいくつか選んでおく(p19-p39, p57-66、魔法リスト)
  2. とりたいスキルのスキル成長表がAかB、最低でもCになっているクラスを選ぶ
  3. とりたいスキルのスキル成長表が良くなる種族や、とりたいスキルを1ランクもらえる種族を選ぶ
  4. とる予定のないスキルで一番スキル成長表が高いものにつき、「才能なし」の短所をとる。「○○忌避」の短所もとってもいい。
  5. 決まった経験点の予算で好きなスキル(スペル)をとる。

ただ、種族については、キャラクターの本質に関わるので、有利不利だけでなく、ロマンも重視してよい。

スキルの習得に必要な経験点

さて、上記の順番で考えるためには、「スキルの習得に必要な経験点」について理解しなければならない。

何点経験点を消費すれば、何レベルのスキルを習得できるのか、というのを大まかにでも理解していないと最初の「とりたいスキルをいくつか選んでおく」ことも難しいからだ。

そして、スキルを習得するのに経験点が何点かかるかを知るためにはスキル成長表(38-39p)を読まなければならない。

しかし、スキル成長表はとっても読みにくい。でも、そしてスキル成長表読み方にはコツがあるので教えよう。

スキル成長表読み方のコツその1:A欄だけをみる

スキル成長表が読みにくい理由の半分はやたらと数字が並んでいて、どの数字を見ればいいか分からなくなるからだ。しかし、次の法則を覚えれば、A欄以外は読まなくてよくなる。

「スキル習得欄がBだとAのときより必要な経験点が1割あがる。これがCだと2割…と続き、Fだと5割増しになる」

つまり、スキル欄がAから1段階悪化するごとに必要な成長点が1割上がるのだ。スキル習得欄がAのときに必要な経験点は必ず10の倍数なので、端数は生じない。スペルの習得の場合も同様だ(アプレンティススペルだけ例外)。

このことから、B欄からF欄の数字を読んだり覚えたりする必要はなくて、暗算ですませることができることが分かる。暗算した数字が間違っていないことを確認するときと、アプレンティススキルを習得するときだけB~F欄をみればいいのだ。

まだクラスを選ぶ前でもA欄の数字だけみて、「クラスの都合でA欄にできない場合は、必要な経験点が1~2割くらい増えるかも」と思っておけば、欲しいスキルとレベルを選んでおくことは十分できる。

スキル成長表読み方のコツその2:ステップ、ランク、「別のスキル」、スペルの必要経験点の計算方法を知る

スキル成長表が読みにくいのは、必要経験点を計算する方法が4種類(ステップ、ランク、「別のスキル」、スペル)もあるのに同じ表にまとめてしまっているからだ。

これを1つずつ理解する必要がある。

別のスキル

まずは、「別のスキル」。分類名だけではわかりにくいが、、「習得しているか習得していないかの区別だけがあり、レベルのようなものはない」というスキルのことだ。「別のスキル」は必要経験点が10点のもの(A欄の場合、以下同じ)が1つ(着火術)と20点のものが5つ(気絶打撃と4種の甲冑知識)ある。

ランク

次は「ランク」。これは1レベル習得するごとに経験点が10点必要なスキルだ。たくさんある。

スペル

続いて「スペル」。これは、スペルのMPと同じだけの経験点が必要だ。とてもたくさんあり、ルールブックとは別冊子にまとまっている。どのスペルを習得できるかは、クラスによって異なるのに注意しよう。アプレンティススペルも同様(5MPなので、5経験点)だが、B欄以下の場合の必要経験点の計算方法が違うので、スキル成長表を見よう。

ステップ

最後に「ステップ」。これは1レベル目より2レベル目、それよりもさらに3レベル目の習得に必要な経験点が多いスキルだ。ステップごとにスキル成長表を1行使っているので、表では目立つが、そこまで数は多くない。

例えば、耐久力Ⅰは30点かかるが、耐久力Ⅱは50点、耐久力Ⅲは70点かかる。

耐久力Ⅱを習得するには耐久力Ⅰを習得しなくてはいけないので、耐久力Ⅱを習得するには、合わせて80点の経験点が必要になることに注意しよう。

これだけ分かれば、キャラクター作成時に貰える100点+短所でもらえる少しの経験点でどのスキルがだいたい何レベルとれそうか分かるはずだから、「とりたいスキルをいくつか選んでおく」ことができるはずだ。

クラスを選ぶ

次に、あなたがとりたいスキルのなるべく多くがA欄、他もできればB欄か最悪C欄になっているクラスを選ぼう。どのスキルがどのクラスでとりやすいかは、意外と分からないものなので、とりたいスキルの所だけでいいので、全クラスのデータを確認しよう。

たとえば、前線に立つために「耐久力」が欲しいし、休憩時には鎧を直す回復役がやりたいから「甲冑製造」と「甲冑知識」が欲しい。情報収集役もやりたいから「追跡術」か「伝承知識」のどちらかも欲しい……

と思ったなら、君が選ぶべきクラスは「スカウト」だ。耐久力と追跡術がA欄で、甲冑製造と甲冑知識がB欄だからだ。

甲冑製造と甲冑知識がスカウトより得意(A欄)のクラスとしてクラフターがあるが、クラフターは耐久力がC欄だし、追跡術がE欄、伝承知識がC欄と情報収集は得意でなく、目的に照らすとスカウトより効率が悪い場合が多い。

このとき、種族によって、スキルの習得欄が変わる場合はこれを考慮に入れても良い。特に人間はスキル2個の習得欄をどれでも1段階良くすることができるので、B欄2つをA欄にすることができることを考えに入れておくといいだろう。(他の種族の場合もスキルが合致する場合は同様だ。特にハーフエルフとハーフオークは選択の幅が大きい。)

たとえば、「ポーション精製」を高レベルでとって、「スペル」も習得していきたいが、戦闘で打たれ弱いのは嫌だから「武装呪文詠唱」も欲しいし、将来的には「魔法学位」もとりたいかもしれないという場合、人間の君が選ぶべきクラスは何だろうか?

答えは「エレメンタリスト」だ。ポーション精製とスペルが両方ともB以上のクラスはいくつかある。でも、武装魔法詠唱がとれるのは、ポーション精製とスペルが両方ともBのエレメンタリストと「アニミスト」だけだ。そうして、エレメンタリストの方が、武装魔法詠唱や魔法学位の習得コストが安い。

よって、人間の特性を使ってポーション精製とスペルをA欄にして「エレメンタリスト」を選ぶのがいいだろう。もっとも、他にもとりたいスキルの習得難易度や、両クラスでとれる呪文の違いなどを考えて、アニミストを選ぶ余地はある。

種族を選ぶ

クラスを選ぶ前に種族を選んでもいいが、まだ種族を選んでないなら、ここで種族を選ぼう。自分がとりたいB欄やC欄のスキルを1段階とりやすくできる種族を選べると得だが、ただで貰えるスキルや、特殊能力を重視してもいいし、もちろんロマンで選んでもいい。ただ、オークやハーフオークでスペルを中心を使おうとするなど、どうしても相性が悪く勧められないパターンはある。

短所と長所

後は、短所と長所だけ選べば、スキルに使える経験点が決まる。

「才能なし」と「天賦の才」

長所の「天賦の才」と短所の「才能なし」は得なのかどうなのかが一見して分かりにくい。端的にいうと「才能なし」はお得だからとるべきだが、「天賦の才」はまず損するからやめた方がいい。

選んだクラスのなかで、自分が将来もとらなそうな技能がいくつもあるはずだ。そのうち、できればA欄、なくてもB欄のものを1つ選んで「才能なし」をとると、20点か15点の経験点がほぼデメリットなしでもらえる。

さらに、着火術、気絶打撃のスキルの場合は、そのスキルをとる予定があっても「才能なし」をとってもいい。必要経験点がそれぞれ1点ないし2点しか増えないのに、20点も経験点がもらえるからだ。

「天賦の才」はうまくクラスを選んでもB欄になってしまったとりたいスキルをA欄に上げるのに役立ちそうだが、経験点が20点もかかるので、まず元が取れない。20点の元を取るためには、A欄換算で200点より多くの経験点を1つのスキルに使わなければならないが、そこまで費やせる技能がほとんどない。意味がありそうなのは、耐久力Ⅴ以上、回復力Ⅳ以上、スペル210MP以上、精神力Ⅳ、スペル耐性210MP分以上、魔法耐性Ⅲ、暗殺術Ⅴ以上、医術Ⅵ、甲冑製造Ⅵといったところだが、こういったスキルに200経験点を超えてつぎ込むなら、「天賦の才」なしでA欄にできるクラスと種族を選んだ方がいい。

「天賦の才 - C欄」以下なら、必要経験点は安くなるが、200経験点を超えてつぎ込む予定のスキルがC欄になっている時点でクラスの選択を見直した方がいいだろう。

~~忌避

全魔法忌避はパーティーの魔法使いのだれからも援護が全く受けられなくなるから厳しいが、特定の魔法種別だけを忌避するなら、なんとかなる場合が多いだろうから、とってもいいだろう。

他の長所と短所

ロマンで選べば良い。

スキルを選ぶ

ここまでくれば

  • 欲しいスキル(スペル)が何かが決まり
  • もっとも経験点を費やすスキル(スペル)はA欄かB欄であり
  • スキル習得に使える経験点も分かっている

はずだ。

あとは、経験点を欲しかったスキル(スペル)に注ぎ込めば、キャラクターのデータ面は完成だ。おめでとう!

タッチタイプが覚えやすいかな配列「かわせみ配列」を他の配列と数値的に比較する

はじめに

かな配列の中では一番タッチタイプが覚えやすい、かわせみ配列という配列を作りました。

そこで、以前比較した、ローマ字配列、AZIKこまどり配列、JISかな配列、Nicola(親指シフト)配列新下駄配列よだか配列の比較にかわせみ配列を加えてみます。

比較するのは、動作数、打鍵数、指の移動量です。それぞれの意味については、前回の記事で説明したとおりです。使用している例文も同様です。

動作数と打鍵数の例文での比較

例文:「さっぽろでちーむにごうりゅうした。」(札幌でチームに合流した。*1 17文字)

動作数 総打数
ローマ字入力 28 28
AZIK 23 23
こまどり 24 24
JISかな 20 23
Nicola 17 27
新下駄 16 22
よだか 16 24
かわせみ 16 24

かわせみ配列の数字はよだか配列と全く同じになりました。動作数でいうと、

ローマ字入力>こまどり,AZIK>JISかな>Nicola,新下駄,よだか=かわせみ

の傾向が見て取れます。

総打数でみると

ローマ字入力Nicola>こまどり,よだか=かわせみ,AZIK,JISカナ,新下駄

という関係が読み取れ、この例文ではNicolaが意外に総打数が多くなっていることがわかります。これはこの例文ではNicolaでは単打にならないカナが多く使用されているからです。

他の例文でも見てみましょう。

例文:なんでもかんでもみんなおどりをおどっているよ。(23文字)

動作数 総打数
ローマ字入力 38 38
AZIK 35 35
こまどり 35 35
JISかな 30 30
Nicola 23 39
新下駄 23 33
よだか 20 28
かわせみ 20 28

この例文でも、かわせみ配列はよだか配列と同じ数字になりました。

動作数では、

ローマ字>AZIK,こまどり>JISカナ>Nicola,新下駄>よだか=かわせみ

総打数は、

Nicolaローマ字入力>こまどり,AZIK>新下駄>JISかな>よだか=かわせみ

の関係が読み取れます。

よだか配列の場合と同じく、かわせみ配列も撥音拡張が使えるときは、動作数、総打数のどちらも減らす効果が高いことが分かります。

指の移動量の比較

次は、動作数、総打数に加えて、キーボードによる文章入力の容易さ比較のための方法論試案で使用された計算方法および218文字の例文*2での指の移動量も比較してみましょう。

動作数 総打数 移動量(mm)
ローマ字(Qwerty 370 370 10566
ローマ字(Dvorak 370 370 6072
AZIK 340 340 9074
こまどり 357 357 3482
JISカナ 245 264 10508
Nicola 218 312 5004
新下駄 215 274 5136
よだか 204 276 5178
かわせみ 204 274 5080

移動量については、

ローマ字(Qwerty)>JISカナ>AZIK>ローマ字(Dvorak)>よだか>新下駄>かわせみ>Nicola>こまどり

の順番となっており、かわせみ配列がよだか配列や新下駄配列よりほんの少しだけ移動量が減ってます。これは、よだか配列と比べて「く」や「す」が単打で打てなくなったこととのトレードオフなので、これが良い変化なのかは、総打数の変化も見る必要があります。

総打数については、

ローマ字>こまどり>AZIKNicola>よだか,新下駄=かわせみ>JISかな

という関係が見てとれ、かわせみ配列はよだか配列と新下駄配列と同じく総打数ではNicolaに勝っていて、JISかなに迫っていることが分かります。

また、動作数では

ローマ字>こまどり>AZIK>JISかな>Nicola,新下駄>よだか=かわせみ

という関係がみてとれます。

ほかの例文の結果の場合と合わせて見ると、かな配列4種については総打鍵が「Nicola>よだか>かわせみ>新下駄>JISかな」となり、動作数については「JISかな>Nicola>新下駄>よだか=かわせみ」となるようです。

かわせみ配列の単打率はおよそ64%で、よだか配列や新下駄配列のおよそ68%に比べると低いので(なお、Nicolaの単打率はおよそ54%)、総打数がもっと多くなるのではないかと考えていました。しかし、かわせみ配列はよだか配列と違って拗音拡張が3キー同時打鍵ではなく2キー同時打鍵なのが意外と総打数の削減に効いているようで、ほとんど差がないか、かわせみ配列の方が微妙に小さくなっています。かわせみ配列はよだか配列よりずっと覚えやすいように作っていますし、総打数や動作数に差がなくキーボードも選ばないという利点もあるので、全体的には「かわせみ配列」の方がよだか配列より優れた配列ということになるでしょう。

*1:Weblog 61℃: 同時打鍵は魔法の呪文ではない。より。他配列の動作数(リンク先では「名目打鍵数」)、総打数(リンク先では「実質打鍵数」)も書かれています。

*2:せっかくうったぶんしょうがいっしゅんできえてしまうのは、わたしもなんかいかけいけんがあります。しかし、こうしたいんたーふぇーすのけっかんがどこにせきにんがあるのかはいちがいにはいえません。このばあいでも、おやゆびしふとにせめをおわせることはできません。まず、とりけしきーのいちは、たしかにわーぷろせんようきのじだいのおやゆびしふとではえんたーきーのひだりでしたが、げんざいぱそこんでつかうばあいには、かならずしもそのいちにはありません。

よだか配列、こまどり配列をNicola、JISかな、ローマ字入力、新下駄配列と比較する

はじめに

日本語入力に使われる配列のうち、一番使われているローマ字配列、その改良版として有名なAZIK、自作のこまどり配列、かな配列として有名なJISかな配列とNicola(親指シフト)配列、配置の練られた文字キー同時打鍵系配列として評価が高い新下駄配列、同じく文字キー同時打鍵系の自作のよだか配列について動作数、打鍵数、指の移動量について比較してみました。

打鍵数と動作数について

かな配列はいずれもカナを入力するためになんらかの「シフト」キーを押します。

  • JISかな配列では小書きカナ(ゃゅょ等)や「を」「っ」、カギ括弧や句読点などを入力するのに普通のシフトキーを使います。
  • Nicola配列では、一部のカナや濁音、半濁音の入力に親指で打ち分ける2つのシフトキーと文字キーを同時に打ちます。
  • 新下駄配列では一部のカナを入力するときや、拗音ようおん拡張を使用する際に文字キー中に存在するシフトキー(計6個))と逆の手の文字キーを同時に打ちます。
  • よだか配列では一部のカナを入力する際や撥音はつおん拡張を使用する際に右手と左手でそれぞれ文字キーを一つづつ(計2つ)同時に打つほか、拗音を打つ場合などで、同じ手で2つのキーを同時に打つ場合もあります。

配列評価にあたって打鍵数を数えるにあたっては、シフトのために押すキーと文字キーとあわせて2つ以上のキーが押されたと数えるか、シフトキーを1つのキーとは数えないかで流儀が分かれていますが、これは両方数えることとしましょう。

まず、シフトキーを無視し、複数キーの同時打鍵をキー1つの打鍵と同視する数え方については「動作数」として数えます。

シフトキーを含めたキーの数については「総打数」として数えることにします。指の負担量を測るためには動作数より総打数の方が有用でしょう。

各配列でのカナ数と動作数と打鍵数の関係

ローマ字入力や行段系配列

ローマ字入力や行段系配列の場合、シフト動作はありませんので総打数と動作数は等しくなります。ただし、かなを1文字入力するのにだいたいの場合は複数の打鍵が必要です。

かな配列

JISかな配列の場合、濁音や半濁音を入力するにはキーを2回打つ必要があるので、動作数は入力できるカナ数より多くなります。しかし、シフト動作が必要な割合は小さいので、動作数と打鍵数の差は小さくなります。

Nicola配列の場合、必ず一動作でカナを一つ入力するので、入力するカナの数と、「動作数」は等しくなります。Nicolaではシフトなしで入力できるカナ及び句読点の割合は出現頻度を考慮すると57%程度なので(これを「単打率」ということにします*1)、文章にもよりますが、打鍵数は動作数のおよそ1.4倍強くらいになるはずです。

新下駄配列やよだか配列でも一動作で一つのカナを出力できますが、新下駄配列では拗音を一動作で一気に入力できる拗音拡張があります。よだか配列では拗音拡張に加えて、撥音も一気に入力できる撥音拡張が使えます。これらの拡張が使えるときは「動作数」はカナの数を下回ります。

そして、新下駄配列もよだか配列も単打率は68%程度なので、拡張を考慮しなかった場合、打鍵数は動作数の1.3倍強くらいになるはずです。

動作数と打鍵数の例文での比較

例文:「さっぽろでちーむにごうりゅうした。」(札幌でチームに合流した。*2 17文字)

動作数 総打数
ローマ字入力 28 28
AZIK 23 23
こまどり 24 24
JISかな 20 23
Nicola 17 27
新下駄 16 22
よだか 16 24

動作数で言うと、

ローマ字入力>こまどり,AZIK>JISかな>Nicola,新下駄,よだか

の傾向が見て取れます。

しかし、総打数でみると

ローマ字入力Nicola>こまどり,よだか,AZIK,JISカナ,新下駄

という関係が読み取れ、この例文ではNicolaが意外に総打数が多くなっていることがわかります。これはこの例文ではNicolaでは単打にならないカナが多く使用されているからです。

他の例文でも見てみましょう。

例文:なんでもかんでもみんなおどりをおどっているよ。(23文字)

動作数 総打数
ローマ字入力 38 38
AZIK 35 35
こまどり 35 35
JISかな 30 30
Nicola 23 39
新下駄 23 33
よだか 20 28

動作数を見ると、

ローマ字>AZIK,こまどり>JISカナ>Nicola,新下駄>よだか

の関係が見て取れます。よだか配列の動作数が低くなっているのは、撥音拡張を3回も使えているからです。

総打数で見ると、

Nicolaローマ字入力>こまどり,AZIK>新下駄>JISかな>よだか

の関係が読み取れます。撥音拡張は使えるときは動作数、総打数両方の削減によく効くことがわかります。また、この例文も総打数的にはNicolaとは相性が悪いことがわかります。

指の移動量の比較

次は、動作数、総打数に加えて、キーボードによる文章入力の容易さ比較のための方法論試案で使用された計算方法および218文字の例文*3での指の移動量も比較してみましょう。

動作数 総打数 移動量(mm)
ローマ字(Qwerty 370 370 10566
ローマ字(Dvorak 370 370 6072
AZIK 340 340 9074
こまどり 357 357 3482
JISカナ 245 264 10508
Nicola 218 312 5004
新下駄 215 274 5136
よだか 204 276 5178

なお、この移動量は①キーボード中段をホームポジションにし、②指を毎回ホームポジションに戻すこと、が前提となっています。このため、JISカナ配列で、中段以外をホームポジションにした場合は数字が異なってきますし、促音を出すために子音を連打するローマ字入力には不利な計測結果になっています。

そういった不完全さに目をつぶると、指の移動量については、

ローマ字(Qwerty),JISかな>AZIK>ローマ字(Dvorak)>よだか,新下駄,Nicola>こまどり

という関係が成立しているのが分かります。

特にこまどり配列の移動量の少なさは圧倒的で、これは打鍵の68%がホームポジションの8キー、78%が中段の10キーに集中していることによります。*4 *5

また、ローマ字入力についてはQwertyをベースにAZIKを採用するよりも、Dvorakに変更した方が移動量の削減効果が大きいこともわかります*6

なお、今回の例文では総打数については、

ローマ字>こまどり>AZIKNicola>よだか,新下駄>JISかな

という関係が見てとれ、よだか配列と新下駄配列が総打数ではNicolaに勝っていて、JISかなに迫っていることが分かります。

また、動作数では

ローマ字>こまどり>AZIK>JISかな>Nicola,新下駄>よだか

という関係がみてとれます。

ほかの例文の結果の場合と合わせて見ると、かな配列4種については総打鍵が「Nicola>よだか>新下駄>JISかな」となり、動作数については「JISかな>Nicola>新下駄>よだか」となるようですね。

*1:この記事ではkouyさんの1gram分析データを使用して計算しています。

*2:Weblog 61℃: 同時打鍵は魔法の呪文ではない。より。他配列の動作数(リンク先では「名目打鍵数」)、総打数(リンク先では「実質打鍵数」)も書かれています。

*3:せっかくうったぶんしょうがいっしゅんできえてしまうのは、わたしもなんかいかけいけんがあります。しかし、こうしたいんたーふぇーすのけっかんがどこにせきにんがあるのかはいちがいにはいえません。このばあいでも、おやゆびしふとにせめをおわせることはできません。まず、とりけしきーのいちは、たしかにわーぷろせんようきのじだいのおやゆびしふとではえんたーきーのひだりでしたが、げんざいぱそこんでつかうばあいには、かならずしもそのいちにはありません。

*4:こまどり配列は中段だけでも現代日本語が打てるように設計されていますので、拡張機能を使わずに動作数(=総打数)が増加することを受け入れれば、指の移動量をさらに減少させることもできます

*5:中段志向で指の移動量を極端に少なくてできる一行系配列としては他にこまどり配列の元となった「つばめ配列」などがあります。

*6:AZIKの開発者がDvorakベースのACTに移行したというのも、うなずける話です。