ましゅーましまし

LARPとフォントとTRPGと日本語配列とマダミスとキーボードと(電子ペーパー)ディスプレイと自由の話

LARPに定義はないが、ここに語釈がある

LARPの語釈

LARP(らーぷ)

Live action role-playing gameの略称。ライブアクションRPGとも。身体感覚を活かして、LARPの提供者が設定した状況設定における、自分でない人物の行動を選択し、演じる遊び。教育目的で提供される場合などではgameの語を使わず、Live action role-playingの略称として紹介される場合もある。*1

ストーリーLARP

主催側が一定のシナリオを準備し、参加者がある程度詳細な設定やゲーム的なデータの定められたキャラクターを与えられたり自分で作ったりした上で、物語の中の登場人物としての立場に立った行動の選択とその結果を楽しむLARP。

群像劇LARP

ストーリーLARPのうち、参加者が一定の会場の中を自由に歩き回り、お互いに自由に交渉したり敵対したりして物語を作っていくことに主眼としたもの。キャラクターの設定や能力は物語を作りやすいように準備されたものが主催者から配布されることが多い。群像劇型LARPとも。*2

シナリオクリア型LARP

ストーリーLARPのうち、主催者が準備した障害を順番に乗り越えながら、シナリオに設定された目的を達成していくことを主眼としたもの。キャラクターの設定や能力は参加者が一定のルールに従って選択できることが多い。参加者がチームとして行動したりすることや、室内で行なわれる場合でも会場の場面転換により多くの場所を(ゲーム内で)訪れることができるようにすることが多い。*3

LARP武器

近接武器を使ったチャンバラ風の打ち合いでキャラクター間の戦闘を処理するルールを採用したLARPで使うため、剣や斧などを模して人にあたっても怪我させないよう比較的柔らかめの素材で作られた模造武器。手で持って振ることを想定したLARP武器にはグラスファイバーなどの硬めの芯材(コア)があり、他人のLARP武器による攻撃を受け流したりできるように作られている。投擲用は芯材なしで作られる。特定のLARPでLARP武器として使用することが許される基準は主催者によって異なっており、ゲーム前に主催者による利用可否のチェックが行なわれることも多い。*4

コンバットLARP

ストーリーLARPの一部で採用される、LARP武器を使ったチャンバラ風の戦闘を抜き出してそれを主題として遊ぶLARP。サバゲーフィールドなど大規模で遊ばれることがあるのが特徴。キャラクターを演じる要素がどれだけ含まれるかは、主催者によって異なる。*5

Web LARP

主催側が世界設定をした上で多数の参加者を募り、参加者がその世界に登場するキャラクターの設定を自ら決めて、主にインターネット上でテキストによってやりとりすることでキャラクター同士の交流や世界で起きる出来事への対応を楽しんでいく遊び。大規模なりきりチャットの一種ともいえる。*6

なぜ定義ではなく語釈なのか

LARPの定義については、国内だけでもいくつかの定義がLARP団体や個人によって提示されており、また特定の一つのLARPではなく複数の種類を遊んでいるいわゆるLARPer(らーぱー)と呼ばれる人達の間ではLARPとはどういうものなのかについて、おおむね同じような認識が共有されているように思われます。

しかし、LARPの定義を「『LARPであるものはすべて含む』と同時に『LARPでないものは一つも含まない』」ようにきれいに定義できた例はありませんし、今後も期待できません。また、実態として何がLARPと呼ばれているかを差し置いて「今後はこの定義の沿ったものだけをLARPと呼ぼう」といえるだけの求心力を持った定義も、そういった定義を押し進めようとする動きもありません。

しかし、多くの人が「LARPのシンプルな説明」として参照し、LARPというのがどういう遊びであり、どういう広がりをもっているのかについて端的に説明をする文章は必要です。その際に学術的な議論に耐えるほどの厳密な定義は必要ありません。言葉の意味がだいたい分かり、実際にどういうゲームがLARPと呼ばれて遊ばれているのかの実例が分かれば十分です。

そういう説明を指す言葉としては辞書で言葉の意味を説明するときに使う「語釈」の方が、厳密さを感じさせる「定義」よりも適切だろうと考え、辞書風にまとめてみました。文責はすべて私、ましゅーにあります。「LARPって何?」と聞かれたときに「この記事の前半の『LARPの語釈』というところを読むとだいたい分かるよ」といえる記事になっていれば幸いです。その後に、「自分が好きなのは○○LARP」とか「自分がやっているのはここに挙がっている例とはちょっと違って××な感じのLARP」と繋げてくれると嬉しいです。*7

注意して欲しいのは、ここで「○○LARP」という用語を説明したり、語釈で「××なLARP」と書いたからといって「○○LARP」として遊ばれている遊びがこのページの頭の「LARP」の語釈に書かれたいくつもの要素を全て備えているという意味や、ましゅーがLARPと認めているといった意味はないということです。私が書いた語釈に「この説明に沿うものはLARPだ」「この説明から外れるものはLARPではない」というような意味も力もありません。

また、ここに挙げていない「○○LARP」といった遊びや分類もいくつもあります。「手紙LARP」「ジャーナリングLARP」「交流型LARP」といった用語の説明を設けなかったのは私がこれらの用語の語釈を書く自信がなかったからです。

LARPという用語を広く捉えるとTRPGやマーダーミステリーゲームも含むことができてしまいますが*8、これらのゲームは通常「TRPG/マーダーミステリーであってLARPではない」と理解されます。そういった使い分けやジャンルの境界論についてはLARPだけをいくら丁寧に説明しても明らかになりませんのでこの記事でTRPGやマダミスとLARPとの差異を説明することは諦めました。そういう使い分けを説明するには、また別の記事が必要になるでしょう。

脚注で示した実例の説明の誤りの指摘や、この語釈はこう変えた方がいいのではといった提案については、ここのコメント欄でも、TwitterのDMでもいいので、個別にご連絡ください。

*1:"Live action role-playing game"の略称なのに、Gが含まれていないことを疑問に思う人もいるかもしれませんが、LARPというのは海外から来た用語で、昔からこう略されています。そういうものだと理解して諦めてください。おそらく、"らーぷぐ"だと発音しにくいとかそんな理由です。LARPを"Live action role-playing"の略称と呼ぶのは間違いではありませんが、"Live action role-playing game"をLARPGと略することはしません。

*2:マスカレイドのカギオクや砦、アビソミニアの遺産相続LARP、木場氏が開発中の2187年 宇宙の旅 ─21人ぐらいいる!─などが、群像劇LARPの例です。

*3:レイムーンLARPで遊ばれたりCLOSSが提供したりするゲームのうち、エピック・オブ・プレアデスやメメント・モリパトリア・ソーリスといったルールを使ったゲームの多くはシナリオクリア型LARPといえます。他にもダンジョンダイバーや唯一国内で商業的に発売されたLARPルールであるソードワールド2.0 LARPもシナリオクリア型指向が強いと分類していいでしょう。

*4:日本国内ではLARP Shop JapanLARP Gearで買うことができます。

*5:ヴァルホルが提供する「ゆるLARP」が、コンバットLARPの典型例です。

*6:「シェルター」や、終局世界物語、イクサ魔法学院などが典型的なWeb LARPの例です。終局世界物語ではWebと会場を借りての実プレイを組み合わせる試みが行なわれました。

*7:また、もしこのページを読んでLARPを遊んでみたいという人がいたら、LARPを遊んでみたいならここに行け[関東編]が参考になるかもしれません。

*8:例えば、マダミスと群像劇LARPがいかに近いかについてマダミスとLARPの距離という記事を書いています。